それはそれは不思議な体験だった。飛び乗った電車が、女性専用車両だった時の、何とも気まずい感覚に似ており、違和感のある異様な視線を感じた。いずれも60代半ばを過ぎた、女性3名男性5名のグループで申し込んだバスツアーの顛末だ。早めに現地に集合した私たちは、添乗員の招きで早々にバスへと乗り込んだ。座る間もなく、乗客が乗り込んでくる。あれあれあれ、次から次へと若いギャルばかり、始めのうち今日は華やかなバスツアーになると内心喜んだ。ところが後から乗車するのもギャルばかり、中にはどう見ても大学生らしきギャルもいる。10名くらいならご愛敬だが、ここまでくると、これはこれでなんとも居心地が悪い。さて娘たちの目当てはなにかと、おじさんおばさんは考えた。きょうのコースは、ウイスキー工場の見学・試飲、豆乳鍋の昼ごはん、名刹の見学、温泉、イチゴ狩りと来れば温泉で「あ〜あいい気持」なんてことはないでしょう。誰が考えてもイチゴ狩りに決まっている。今更ながら、第一候補の軽井沢でランチが悔やまれる、との心配はご無用。おじさんおばさんの切り替えは素早い。そんな社内の図式も物ともせず、前列に陣取り、異様な存在感を漂わせていく。雨の予想を覆し、昼過ぎまでは陽も差す天気。東京に到着しても雨は降らず、やはり高齢者の只ならぬ威圧感の成せる業ゆえか。それにしてもすべて快適なバスツアーだった。ちなみにバスツアーでは、通常当りが少ないとの常識を覆すようなイチゴで、ものすごく甘くおいしかった。