河津川の上流に河津七滝と言う観光地がある。水が滝のように垂れるので、河津七滝(ななたる)と呼ぶようだ。前日から伊豆を巡った4名、最後にネットで評判の良い店を尋ねた。その店は河津七滝へと続く道の途中にある。「隠れ家的存在」との触込みにふさわしく、陽の陰る薄暗い石段を一歩一歩登っていく。目の前には古民家風の建物が現れ、立て付けの悪い玄関の戸を開け中に入る。女性の力のない声が聞こえてくるが、とても飲食店との雰囲気がない。建物全体に煙が充満する中を進むと、美術館との立札を発見。さらに進むと、真っ暗闇に何枚かの絵が飾ってある。その先で、扉に突き当たる。「美術館に入れないのですか?」すると、「料金が必要です」と言われ断念。どうも画家が料理を作っているようだ。梯子のような階段を昇ると、江戸時代の寺子屋にあった机のような物がアンバランスに置いてある。煙の中をどこから来たのか、猫が現れ、突然我々にちょっかいを出す。衣類や身体に爪を立て、なかなか退散しない。するとこれぞ画家と一見してわかる薄汚い服を着た主人とおぼしき人物が現れる。メニューはシンプルで、家庭でも食べられる干物や肉を焼いて食べさせるようだ。待つこと20分七輪を3個持ち主人が現れた。私は鯵をたのんだが、たまたまなのか、身離れが悪く、評価のしようもない。帰りに石段を下っていくと、中国人の集団が登ってくる。「オイシカッタデスカ?」仲間の一人が「美味しかったですよ?」私は……